感情を用いた誘導について

プロパガンダなどに利用される感情を用いた誘導について。


恐怖感情。
恐怖心は強迫行動を誘導できる。間接的でも良いので賞罰(特に罰)を提示できれば、最も効率良く具体的な行動を誘導できる。これは主に宗教組織や暴力団体に利用されている。
一方、恐怖感情に免疫がある人は功利主義的な思想を実践できる能力になる。行き過ぎると感情を切り捨てる無慈悲な人間になるので注意が必要。


嫌悪感情。

嫌悪感は「伝染りたくない」感情に根差している。特定の対象のイメージと生理的嫌悪感を催すイメージを間接的に印象づけることで、保守的で権威主義的な思考を惹起できる。これは主に政治的プロパガンダに応用されている。
一方、嫌悪感情に免疫がある人は博愛精神を実践できる能力に繋がる。免疫があり過ぎると貞操観念へのアンビバレンスへと揺らいでくる場合もあるので注意が必要。

怒り感情。
怒りは「(偉大な)自分の邪魔をするもの」に対して向けられる。その人の自尊感情を煽り仮想敵(影)の共有をすることで集団の結束力を固めることができる。これは国家のプロパガンダから集団心理のリーダーシップまで比較的どこでも用いられる。
怒りに免疫がある人は受容的な理解を実践できる能力に繋がる。行き過ぎると主体性や合理性のなさとして現れる場合があるので注意が必要。

自尊感情を低下させ奴隷化させる方法。嫌悪される対象とその人を巧妙に関連付け、それを相手に認めさせることで誘導される。これは毒親、サイコパスモラハラに始まり、ブラック企業の指導、宗教組織の洗脳etc..で権威関係を築く方法として利用されている。
これに免疫がある人は共依存集団から離脱できる能力に繋がっている。行き過ぎると社会道徳性のなさが現れるので注意が必要。

悲しみ感情。
悲惨な現実や悲しみに暮れる表情を見せることで慈善的な言動を誘導できる。政治的プロパガンダや慈善団体、果ては悪質な詐欺団体が利用する。
悲しみに免疫がある人は公正な理解と判断を実践できる能力に繋がる。行き過ぎると理解があるのに冷たく見えたりするので注意が必要。

感情を利用した誘導技法は、それと分かっていても強力に作用する性質がある。
気質的に志向性やコンプレックスがある場合は仕方ないが、中性的な人の場合は免疫をつけることで唯一の薬となる。
こうした組織は社会情勢の鏡でもあるので、注意深く態度を選び、賛同することや自身の意見を考えるべきと思われる。

心理学用語と誘導方法について

社会心理学用語から思い付いた誘導技法と、その考証判別方法一覧。

 

☆基礎

ライミング効果

先行する刺激によって後続の刺激への反応を変化させること。促進プライミングと抑制プライミングがある。応用すれば、相手の指摘できないところで、持っていきたい方向への情報を無意識に与え続ければ、中性的な行動は誘導させることができる。転じて、相手のプライミングのサインに注意することで、その方向性を読むことができる。

 

場面効果

特定のシチュエーションには活性化されやすい心理状態がある。例えば、合コンでは男女関係にまつわる内容が活性化される。場面効果を応用すれば、行動を予測しやすい状況を意図的に作り出すことで、その人の特性とを鑑みて行動の予測ができる。転じて、どういう状況に追い込まれているかを考え直すことで、自分にとって不利益な人物(犯人)を洗い出すことができる。

 

損失回避効果

損失やリスクを提示されると、たとえ合理的な行動でなくても損失やリスクを回避する行動や選択をしやすいこと。応用すれば、大枠で相手に得をさせることで、それを指摘せずとも仄めかせば(損失をちらつかせることで)、こちらの損失となる行動を制限できる。転じて、損得の手管を考察することで相手がどういう手段で攻めと守りを固めているかを分析することができる。

 

マキャベリズム

君主制。上下関係と役割による行動制限を明示しておくと、カースト(階級)の恩恵を失い難い為に、保身と裏切りに走りやすく、役割を果たせていない点を指摘したり密告させることで、絶対的な上下関係を作ることができる。

 

報酬の暗示効果

目の前に報酬が暗示されると、実際の価値よりも魅力的に見えること。応用すれば、普通や平均と異なる相手の特徴(コンプレックス)の両価性に注目し、都合の良い方を満たしてあげることができる(報酬)と暗示すれば、相手にとって無意識に魅力的に見せることができる。平易な言葉で言えば無意識にニンジンに食いつく。転じて、自分にとって目先の報酬がある対象は、長期的にはマイナスになるかどうかを考えて自制する必要がある。

 

☆接近

印象形成

最初期の印象は外見と行動と評判の3つで決まる。応用すれば、外見と行動と評判が上位になるように点数を稼げば、周囲が自ずと守ってくれるようになる。転じて、このようなことがよく分かって点数稼ぎが周到なタイプは、野心や目的があって行動している場合が多い。

 

自己開示

相手が知り得ない、自分の価値観や物の考え方などの情報をオープンにすることで仲良くなること。応用すれば、相手の価値観や物の考え方、状況などが近似しているという情報を選択的に伝えることで、親密さを誘導させることができる。互いの秘密であることを仄めかせば、さらに親密さは増す。転じて、他者にどのような性質の自己開示を行っているかを観察することで(人と秘密を共有したがるなど)、その人が信頼できるかどうかを測ることができる。

 

初期情報の効果

印象的な情報を与えられると、後続の情報は前の印象のイメージを維持する形で解釈されること。応用すれば、一旦良いイメージを形成、維持することで、あまりに悪い情報は例外として周囲の人には無視させることができる。転じて、良い印象の人ほど、悪い印象の情報を傾聴することで悪質性が判明したりする。

 

初期差異化効果

最初期に親密になった人とは、2,3ヶ月の間、行動と情報を共有すること。応用すれば、親密になることで善悪両方の情報を収集し、流用ができる。転じて、急速に親密になった人が持ってきた悪い情報には裏の意図があるかを警戒するべきで、真実かどうか精査することで(嘘による操作がないかよく確かめるなど)、悪意ある接近かどうかを判別することができる。

 

☆回避

スキーマ

状況と文脈によってひとまとまりある情報として認識される特性のこと。応用すれば、状況を勘違いさせる順番で情報を提示すれば、文脈から欠損された情報を(勝手に)補って印象を受け取らせることができる(文脈を誤解させる形で問題発言を取り上げるなど)。転じて、状況や前後の文脈を明らかにして確認すれば、印象操作(ミスリード)かどうかを確認することができる。

 

基準シフト効果

先行情報が基準となることで後続の情報の印象が左右されること。応用すれば、落としどころに向けて与えたい印象を先に示して本命の情報を本来より良い(もしくは悪い)印象にシフトさせることができる(先に自分に非がない話を持ってきて後続の印象を操作するなど)。これに対しては、客観的な視野で見ているか、誘導通り限定的な視野におちいっていないかを比較することで、相手の操作性を吟味することができる。

 

ヒューリスティック効果

曖昧な情報が多く明確な情報が不足している場合、単純かつ簡単な理解ができる方法で解釈してしまうこと。応用すれば、間違ってはいないが正しいとも言えない情報を与えることで、印象の操作をすることができる(確認しようという気が起きにくい為)。転じて、不確かさを排した明確な形で情報を共有する体制をとることで、間違った解釈(ミスリード)を求める混乱を防ぐことができる。

 

ゲインロス効果

肯定的なイメージから否定的なイメージに変わった時の印象の落差が激しいこと。反対に否定的なイメージから肯定的なイメージに変わったときの印象が実際より良く見えること。応用すれば、否定的なイメージがどこに現れるかを意図することで、印象を良くするハードルをこちら側で設定することができる。転じて、肯定的なイメージや否定的なイメージを排して(評判に惑わされずに)情報を見れば、印象操作を排除することができる。

 

☆実戦

情報選択効果

自分で仮説を立てると無意識にその正しさを証明したくなりその仮説に沿った情報を探してしまうこと。応用すれば、与えたい印象に向けて情報を流し本人に仮説を立てさせて立証させれば、永続的に信念を形成させることができる。これに対しては、情報を流した人物の信条、理念を先に考察しておくことで、印象操作をある程度、客観視することができる。

 

関係の崩壊

親密さは単純接触回数と近似性と役割分担から成っている。応用すれば、他の集団や個人へのコミットメント(関与)回数と近似性を減らすことで、他集団への満足度を減少させて関係崩壊と孤立化をさせることができる。転じて、他のコミュニティへの参加を維持することや孤立化を促されていないかを考えることで、共依存からの自律性を担保することができる。

 

吊り橋効果

心拍数や自律神経の緊張と弛緩が性的な好意と関連付けられて知覚されること。応用すれば、恐怖を煽ったり赦したりすることで、苦痛そのものを好意と錯覚させることができる。継続するとストックホルム症候群となり離脱に際して禁断症状に似た依存性が生じることがある。転じて、出口のない苦痛に耐えたり自尊感情の低下を意図する言動に耐えたりすることと相手への好意は別物だと認識する必要がある。もしくは深入りする前に避けるべき。

 

態度

自身の意見の正しさを肯定されることよりも、本質的には態度の正しさを肯定されることで承認欲求は満たされる。応用すれば、意見が正当でも態度を否定し、一方で意見が不当でも態度を肯定することで、自身の頭で考える思考能力を奪って権威主義思想を植え付けることができる。転じて、意見そのものよりも態度への言及が多いか少ないかを注意深く見ることで、権威主義志向が強いかどうかを判別できる。

 

共同体

運命共同体」的色彩を帯びると抜け出しづらくなる。これを応用すれば、共同体の一員としての人格的弱点を責め立て罪悪感を煽り、一方で共同体の共犯もしくは一員であることを赦し働かせることで、共同体に縛り付けながら上下関係を築くことができる。転じて、罪悪感を煽る人物はマキャベリ的知性が高いこと、共同体から抜け出すには罪悪感を無視する必要性があると考えた方が良い。

 

要約すれば、

1.アンカリングによる行動誘導、

2.ミスリードによる印象操作、

3.無意識に抑圧された恐怖によって言動の選択を永続的に制限する、

ということを注意し避けよう、ということ。